Amazonで中国出品者の万年筆が届かなかった — 返金の翌日に現物が届くまでの19日間

発端:2,500円の万年筆
8月5日、AmazonでJinhao 20 Pressという万年筆を注文した。ノック式の万年筆で、マットブラック、2,500円。パイロットのキャップレスの廉価版のような製品で、値段なりに遊べればいいと思って買った。
出品者はxueyufang155という中国の業者。お届け予定は8月10〜11日。海外発送だし、多少遅れるだろうくらいに考えていた。
この時点で気に留めていなかったことが後で効いてくる。出品者情報を開くと返送先の連絡先がGmailで、しかもアカウント名が日本の携帯番号そのものだった。Amazonの正規出品者というより、個人転売に近い運営だったのだと思う。
追跡が止まる
8月8日に「出荷されました」の通知が来た。追跡番号はYTで始まる、いわゆるYunExpressの番号。
ところが追跡履歴を見ると、配送業者に情報が登録されたのは8月11日、集荷施設に到着したのは8月13日未明。8日の「出荷」は出品者が手続きをしただけで、当初のお届け予定日(8月10〜11日)を過ぎてから、ようやく荷物が動き始めた計算になる。
そして8月13日の「Arrived at origin facility(集荷施設に到着)」を最後に、荷物が日本に向けて動いた記録は一つもない。
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Amazon側のお届け予定日も、8月10〜11日 → 8月14日 → 「お届け日は現在表示できません」と推移した。最後の表示は、Amazonの配送予測システムがこの荷物を諦めたということだ。

返品リクエストという名の「出品者への通知」
ここからClaudeに相談しながら進めた。
まず分かったのは、発送済み扱いの注文には「キャンセル」も「返金」もボタンが出ないということ。Amazonのフローは商品を持っている前提で組まれているので、届いていない商品でも入口は「商品の返品」になる。
返品理由に「商品が届いていない」系の項目を選び、出品者へのメッセージ欄にはこう書いた。
8月5日注文、当初のお届け予定8月10〜11日でしたが未着です。予定日は8月14日に変更後、現在は表示不可となっています。追跡(YT…)は8月13日の集荷施設到着以降、更新がありません。商品を受け取っていないため返送はできません。返金を希望します。
意識したのは3点。日付と追跡番号を具体的に書くこと、「返送できない」と明記すること、感情的な表現を入れないこと。Amazonの注意書きにある通り、書き込み内容でポリシーの例外は適用されないので、怒りを書いても効果がない。
次の画面で「返送手続きを開始」というボタンしか出てこなくて一瞬迷った。届いていないのに返送? だがこれは実質的に「出品者に返品リクエストを通知する」ボタンで、押した時点で48時間のカウントが始まり、マーケットプレイス保証に進むための前提条件が満たされる。8月18日14:40に送信。
Claudeには「8月20日15時に確認」のリマインダーをカレンダーとTodoistの両方に入れてもらった。注文番号・追跡番号・申請手順・根拠をすべて説明欄に書かせておいたので、当日はそれを見れば手が動く状態にした。
「承認」という時間稼ぎ
8月22日夜、Todoistの通知を見て再開した。注文詳細を開くと「返品リクエストが承認されました」と出ている。

一見よさそうだが、返金はされていない。「返品状況を確認」を開くと、出ているのは「郵送ラベルを印刷」と「返品のキャンセル」の2つだけ。出品者は「返金します」とは言っていない。「返品を受け付けます」と言っただけで、返送が来るまで返金しない構えだ。商品を持っていない側には返送できないので、このまま放置すれば永遠に返金されない。
「返品のキャンセル」を押すと案件そのものが消えるので、これだけは絶対に押してはいけない。
カスタマーサービスのチャットまでの導線
アプリのカスタマーサービスは、目的の画面にたどり着くまでが長い。実際に通った経路を書いておく。
注文詳細 → カスタマーサービス → 「配送について」 → 「配送状況の確認」 → FAQが表示されて行き止まり → 一番下の「その他のサポート」 → 「今すぐチャットを開始する」
後日もう一度使って分かったが、実はどの項目を選んでもいい。FAQの行き止まりまで進めば必ず「その他のサポート」が出て、そこからチャットに着地する構造になっている。
チャットは最初ボットが出る。「チャットでサポートを受ける」を選ぶと担当者につながる。つながった瞬間に用意しておいた文面を貼った。
マーケットプレイス保証を申請したいです。注文番号 …、出品者 xueyufang155。商品が未着で、追跡 YT… は8月13日以降更新がありません。8月18日に返品リクエストを送り出品者は承認しましたが、商品を受け取っていないため返送できず、返金もされていません。全額返金をお願いします。
担当者の返事は「返金の手続きをさせていただきます。元のお支払い方法とAmazonギフトカードのどちらに返金をご希望でしょうか?」だった。元の支払い方法を選んで、2分後に「2500円を返金いたしました。1-3営業日以内に反映されるはずです」。

マーケットプレイス保証の正式な申請フォームを埋める必要すらなかった。事実関係を一度に全部渡せば、担当者はその場で判断してくれる。チャット開始から返金完了まで約5分、注文から17日目だった。
……と、ここで話が終わるはずだった。
後日談:返金の翌日に、それは届いた
返金処理の翌日、8月24日。玄関に見覚えのない小箱が届いた。開けると、オレンジ色のJINHAOの化粧箱。例の万年筆だった。

伝票を見て呆れた。国内配送ラベルで、発送日は8月18日——私が返品リクエストを送った、まさにその日だ。

後日17trackを見返すと、同日の早朝3時29分に「Change tracking number and relabel」という記録が残っていた。元のYT番号の荷物は集荷施設に入ったまま、出品者は追跡番号を付け替えて別便で送り直していたのだ。時系列上、私の返品リクエスト(同日14時40分)より前なので、催促に慌てたわけではなく、輸送が破綻したのを認識して自力でリカバリーしたらしい。ただしAmazon上の追跡は放置されたままで、こちらには何の連絡もなかった。再発送するなら一言あれば、返金騒ぎにはならなかった。
返金済みの商品が届いたので、Amazonにまたチャットで報告した。黙って両取りにするのは規約上まずいし、そもそも外箱も変形していたので、受け取るより返品したい気持ちだった。ところが案内された返送先は中国・山西省。「着払い伝票」と書いてあるが、日本から中国への着払いは日本郵便もヤマトも実質使えない。送るなら送料自腹で、2,500円の案件に1,000円以上かける計算になる。
そこで「海外への自己負担返送は現実的でないので、返送不要の扱いにしてほしい」と伝えたところ、回答は二行だった。

これで本当に決着。返金は返金として確定し、万年筆は正当に手元に残った。Amazonのポリシー上、海外出品者は本来、日本国内の返送先かプリペイドの返送手段を用意する義務がある。それがない場合、「返送不要で返金」が標準の落とし所になる。
個人情報は大丈夫なのか
決着してから、ふと不安になった。返金を受けて商品も返さなかった相手に、こちらの住所と名前が知られている。逆恨みで何かされないだろうか。
考えてみれば、住所と氏名は注文した時点で出品者に渡っている。マーケットプレイスは配送のために出品者が届け先を見られる仕組みなので、今回の返金や返送不要の決着で新たに漏れた情報は何もない。
動機の面でも心配は薄い。今回の返金はマーケットプレイス保証の枠組みでAmazonが処理したもので、出品者から見れば「Amazonの裁定」だ。追跡を放置した結果として処理されており、個人が何かをもぎ取った形ではない。2,500円の少額案件で、記録が全部Amazonに残っている相手に何か仕掛けるのは、業者にとってコストが割に合わない。この手の業者は薄利多売で、失敗した注文は忘れて次に行く。
現実にあり得るとすれば、身に覚えのない荷物が届く(レビュー操作目的の空発送)くらいで、これは開けずに捨てればいい。それより実務的な注意点は出品者評価だ。低評価を書くこと自体は自由だが、評価は出品者に通知が行く唯一の「こちらからの接点」でもある。静かに終わらせたいなら、書かないのが一番静かだ。私は書かないことにした。
まとめ
- 中国出品者の小口で追跡が1週間止まったら、出品者には期待せずAmazonに直接行く
- 「商品の返品」は届いていない商品でも入口になる。「返送手続きを開始」は出品者への通知ボタン
- 出品者の「返品承認」は返金ではない。「返品のキャンセル」は絶対に押さない
- カスタマーサービスは、どの項目からでもFAQの行き止まりまで進めば「その他のサポート」→チャットに着く。貼る文面を先に用意しておく
- 事実(日付・追跡番号・返品リクエスト日・未受領)を一度に全部渡せば、その場で返金される
- 返金後に商品が届いたら黙って両取りせず報告する。海外返送先しか用意されていなければ「返送不要」で決着するのが標準的な扱い
- 住所・氏名は注文時点で出品者に渡っている。決着で新たに増える情報はなく、少額案件で報復する動機も業者にはない。接点を増やしたくなければ出品者評価は書かない
- AIに手続きを相談するなら、スクショを送って次の一手だけ聞く。言葉だけで進めると存在しない画面を案内される
再発送する能力はあったのに、それを買い手にもAmazonにも伝えなかった——沈黙が2,500円の返金と商品の両方を失わせた、というのが今回一番の学びかもしれない。届いた万年筆は、せっかくなので使ってみることにする。